学校では教えてくれないお金と金融のはなし

なぜ学校でお金の話をしないの?教育の盲点とは

私たちが学校で受ける教育は、読み書きや計算、社会の仕組みなど、さまざまな知識や技能を身につけることを目的としています。しかし、その中で「お金」について学ぶ機会は、意外にも非常に限られています。たとえば、税金の仕組み、投資の基本、ローンや保険といった日常生活に密接に関わる金融知識は、ほとんど教科書に登場しません。

なぜこれほど重要なお金の話が、学校教育の中で扱われないのでしょうか。その背景にはいくつかの理由があります。一つは、「お金の話は家庭で教えるべきもの」という長年の価値観です。日本では「お金の話をするのは下品」といった風潮が根強く、子どもにお金のことを教えることを避ける家庭も少なくありません。そのため、学校でもお金の話題を取り上げることが敬遠されがちなのです。

もう一つの理由は、教える側の準備不足です。多くの教師は金融の専門家ではありませんし、教科書やカリキュラムも金融教育に対応できていない場合が多いです。結果として、お金のことを体系的に学ぶ機会が与えられず、多くの人が社会に出てから「もっと早く知っておきたかった」と後悔するのが現実です。

実際、社会に出れば、お金の知識は生きるために欠かせない武器になります。収入と支出のバランスを取る家計管理、賢い貯金方法、投資による資産形成、住宅ローンや保険の選び方など、人生のあらゆる場面で金融リテラシーが求められます。にもかかわらず、それを若いうちに学ぶ機会がないのは大きな教育的な盲点と言えるでしょう。

最近ではようやく、高校の家庭科で「資産形成」について触れる内容が導入され始めましたが、まだまだ十分とは言えません。今後は、家庭と学校が連携して、お金の知識を早い段階から自然に身につけられる環境づくりが求められています。

お金の価値は変わる?インフレとデフレの基本

私たちが普段使っている「お金」は、単なる数字ではなく「価値」を表す手段です。たとえば、100円で買えるおにぎりが、ある日突然120円になったらどう感じるでしょうか?これは「お金の価値が下がった」状態、すなわち**インフレ(インフレーション)**が起きていることを意味します。

逆に、以前は100円だった商品が80円で買えるようになった場合、これは**デフレ(デフレーション)**と呼ばれる現象です。つまり、お金の価値は常に一定ではなく、時代や経済の状況によって変動しているのです。

では、インフレとデフレはどのような影響を私たちの生活にもたらすのでしょうか?

インフレが進行すると、同じ金額で買えるものが少なくなってしまいます。これはつまり「物の値段が上がる=お金の価値が下がる」状態です。物価が上がると、給料が同じでも生活が苦しく感じることがあります。ただし、適度なインフレは経済成長を示す健全なサインとも言われています。企業の売上が伸び、賃金が上がれば、消費も活発になり、経済が回るからです。

一方で、デフレは物価が下がることでお金の価値が高まる状態です。一見、物が安く買えてラッキーに思えるかもしれませんが、デフレが長く続くと企業の利益が減り、結果として賃金が下がったり、雇用が不安定になるリスクがあります。デフレは経済の停滞を招きやすく、社会全体に悪影響を与えることが多いのです。

このように、インフレとデフレは、単に「物の値段が上下する」現象ではなく、私たちの暮らしや将来に大きな影響を与える重要な経済の動きです。そのため、ニュースや新聞で「消費者物価指数(CPI)」や「金融緩和」といった言葉を目にしたときは、それがインフレやデフレにどう影響するのかを考える習慣をつけるとよいでしょう。

金融リテラシーを高める第一歩は、こうした「お金の価値の変化」に敏感になることです。将来の資産形成や生活設計にも役立つ知識ですので、ぜひ意識してみてください。

銀行って何をしているの?預金と貸出のしくみ

私たちの生活に欠かせない「銀行」。給料が振り込まれたり、家賃を引き落としたり、ATMでお金を引き出したりと、身近な存在ですが、銀行が実際にどのような役割を果たしているのか、詳しく理解している人は案外少ないかもしれません。

銀行の基本的な仕事は、「お金を預かること(預金)」と「お金を貸すこと(貸出)」の2つです。これらは一見シンプルですが、経済の中で非常に重要な役割を果たしています。

まず、「預金」とは、私たち個人や企業が銀行にお金を預けることを指します。預けたお金は銀行の中にただ保管されているわけではありません。実は、銀行はそのお金の一部を使って、他の人や企業に貸し出しています。これが「貸出」です。

たとえば、ある人が100万円を銀行に預けたとします。その銀行は、そのうちの一部(たとえば80万円)を別の誰かに貸すことができます。そしてその貸したお金には「利子」が付きます。この利子が、銀行にとっての収入源となるのです。

つまり、**銀行は「お金の仲介役」**として機能しているのです。お金を余らせている人(預金者)から集めたお金を、必要としている人(借り手)に貸すことで、経済の循環を生み出しています。この仕組みがなければ、企業は設備投資や新規事業に必要な資金を調達できず、経済全体の成長も鈍ってしまいます。

また、銀行は貸し出す際に「信用審査」を行い、返済能力のある相手にしかお金を貸しません。この審査があることで、お金の流れが安定し、金融システムの信頼性が保たれています。

さらに、預金者に対しては「利息」という形で報酬を支払いますが、近年は超低金利の影響で利息はごくわずかです。それでも、多くの人が銀行にお金を預けるのは、「安全性」と「利便性」があるからです。銀行に預けておけば、現金を盗まれる心配もなく、ATMやネットバンキングを通じていつでも引き出しや送金ができるというメリットがあります。

このように、銀行は私たちの「お金のインフラ」として、日々目立たぬところで経済活動を支えています。普段当たり前のように使っている銀行のしくみを知ることは、金融リテラシーを高める大きな一歩になります。

クレジットカードと借金の正しい付き合い方

便利でスマートな買い物手段として広く使われているクレジットカード。しかし、その「便利さ」の裏には、正しい知識と使い方が必要です。使い方を間違えると、気づかぬうちに「借金地獄」に陥ってしまうこともあります。ここでは、クレジットカードと借金に対する正しい付き合い方を学んでみましょう。

まず、クレジットカードの本質は「後払い」です。たとえば、今月10日に1万円の買い物をしても、実際に引き落とされるのは翌月の指定日にまとめて、というのが基本的な仕組みです。この「支払いの先延ばし」が、一時的に資金に余裕を持たせてくれるという利点につながります。

しかし、ここに落とし穴があります。クレジットカードで買い物をしていると、実際にお金が減る感覚が薄れ、ついつい使いすぎてしまいがちです。これを繰り返すと、月末の請求額が思ったより高額になり、支払いに困ることも。支払えない場合は「リボ払いや分割払い」に頼る人もいますが、ここで「借金」としての性質が強くなります。

リボ払いとは、月々一定額ずつ返済していく支払い方法ですが、利息(手数料)が高めに設定されており、長期にわたって返済することになりがちです。たとえば、10万円をリボ払いで返済した場合、利息を含めて最終的に支払う金額が12万円以上になることもあります。

このような事態を避けるためには、まず「今月使える金額」を自分でしっかりと把握しておくことが大切です。そして、クレジットカードは「現金を使っているのと同じ」感覚で使いましょう。請求額はこまめにチェックし、翌月の引き落としに備えて口座の残高を調整しておくことが大切です。

また、カードの利用履歴は「信用情報」として蓄積されます。これらの情報は、将来的に住宅ローンや自動車ローンの審査にも影響を及ぼします。延滞や未払いが続くと「信用が低い」と見なされ、金融機関からの借入が難しくなることもあるのです。

クレジットカードは、正しく使えば非常に便利で、ポイント還元や付帯保険などのメリットも豊富です。重要なのは「借金であることを自覚する」こと。そして「身の丈に合った使い方」を常に意識することです。

投資ってギャンブルじゃない?リスクとリターンを学ぶ

「投資」と聞くと、あなたはどんなイメージを持ちますか?「お金が増える」「難しそう」「怖い」「ギャンブルみたい」——こうした印象を持っている人も多いのではないでしょうか。特に日本では「投資=危険」「貯金が安全」といった考えが根強くあります。しかし、投資は正しく理解し、計画的に行えば、決してギャンブルではありません。

まず、投資とは何かをシンプルに言うと、「将来の利益を見込んでお金を働かせる行為」です。たとえば、株式や投資信託、不動産、債券などにお金を預けて、将来的な値上がりや配当、利息を期待するのが投資の基本です。ここで大切なのが「リスク」と「リターン」の関係です。

**リスクとは「損をする可能性」ではなく、「結果が不確実であること」**を意味します。つまり、利益が出るかもしれないし、逆に損をするかもしれないという「振れ幅」のことです。リスクが高ければリターンも大きくなる傾向がありますが、その分だけ注意が必要になります。

一方、**リターンとは「投資によって得られる利益」**のことです。たとえば、100万円を年利5%の商品に投資すれば、1年間で5万円のリターンが期待できます。ただし、実際には市場の動向や経済状況により、必ずしも想定どおりにいくとは限りません。

ここでギャンブルと比較してみましょう。ギャンブルは運に大きく依存し、統計的には「損をする」ように設計されています。例えばパチンコや競馬などは、プレイヤーよりも運営側が有利になる仕組みです。一方、投資は企業の成長や経済の動きをもとに利益が生まれます。情報を集めて分析し、長期的な視点で行えば、安定した資産形成が可能になるのです。

さらに、近年では「つみたてNISA」や「iDeCo」など、少額から始められる制度も整っています。これにより、リスクを抑えながらコツコツ資産を増やすことが可能になり、「貯金だけでは将来が不安」という現代において、非常に有効な選択肢となっています。

重要なのは、「投資=ギャンブル」という先入観を捨てて、自分の目的に合った方法で賢く取り組むことです。まずは少額からでも始めて、徐々に知識と経験を積み重ねていくことが、安心して投資を続けるカギになります。

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